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広島地方裁判所 昭和44年(行ウ)17号 判決 1971年12月22日

広島県深安郡神辺町字十三軒屋七九番地、八〇番地

原告

安那有限会社

右代表者代表取締役

園尾武夫

広島県福山市東桜町五番一一号

被告

福山税務署長

平方節男

右指定代理人検事

平山勝信

同法務事務官

土肥一之

同大蔵事務官

久保義夫

貞弘公彦

広光喜久蔵

加藤嘉久

西本哲夫

高橋竹夫

右当事者間の昭和四四年行ウ第一七号法人税更正処分取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(申立)

一、原告

「被告が原告に対し、昭和四三年六月二九日付でした原告の昭和三八年ないし昭和四一年の各事業年度(各年三月一日から翌年の二月末日まで。以下三八年度、三九年度、四〇年度、四一年度という。)の法人税についての更正処分および三九年度ないし四一年度の法人税に関する重加算税賦課処分をいずれも取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二、被告

主文同旨の判決

(主張)

第一請求の原因

一、原告は金銭の貸付を業とする有限会社である。

二、原告は被告に対し、本項末尾掲記の表(1)欄記載のとおり原告の三八年度ないし四一年度(以下、本件各係争年度という。)の法人税の確定申告をしたところ、被告は、同表(2)欄記載のとおり更正処分および重加算税賦課処分(以下、両者を合せて本件各処分という。)をし、本件各処分はそのころ原告に通知された。

原告は、本件各処分について、同年七月三〇日被告に対し異議の申立をしたところ、被告は、同年一〇月二九日これを棄却する決定をし、右決定はそのころ原告に通知された。

そこで、原告は、同年一一月三〇日、広島国税局長に対し審査請求をしたところ、同局長は、昭和四四年一月二九日右請求を理由ないものとして棄却する裁決をし、右裁決はそのころ原告に通知された。

<省略>

三、しかし、本件各処分は、原告の本件各係争年度における訴外小坂市郎、同小松安弘、同小松喜啓からの受取利息の額を誤認した結果、課税所得額の認定を誤つてした違法な処分である。

原告の各係争年度における右小坂市郎らからの受取利息額は別紙表一記載のとおり、三八年度は合計一万二、〇〇〇円、三九年度は合計六万円、四〇年度は合計三万七、三〇〇円、四一年度は合計六万六、〇〇〇円であり、課税所得額も前記各確定申告額が正当である。

四、よつて、原告は、被告に対し、原告がなした本件各処分の取消を求める。

第二請求の原因に対する被告の答弁

一、請求の原因一・二項は認めるが、三項は争う。

二、本件各処分の経過および税額算出の根拠は次のとおりである。

(一) 原告は、本件各係争年度において、訴外株式会社備南製作所(以下、備南製作所という。なお、昭和四二年一月七日商号を備南工業株式会社に変更した。)、同福山パール紙工株式会社(以下、福山パール紙工という。また、両社を合せて両訴外会社という。)に対し別紙表二ないし五記載のとおり金銭を貸付け、両訴外会社からこれに対する利息を別紙表六ないし九記載のとおり、三八年度は合計三二万四、〇四三円、三九年度は合計四三万三、二六〇円、四〇年度は合計六四万一、〇七〇円、四一年度は合計六八万一、二一〇円を受取り、昭和四一年度には訴外藤岡岩雄から受取るべき未収利息八、一〇〇円があるにもかかわらず、右六ないし九の原告記帳額欄記載のとおりその一部のみを計上し、残余を除外した決算に基づいて、本件各係争年度の法人税の確定申告をしている。

(二) そこで、被告は、これらの除外された受取利息(被告の誤により内金額が下廻つているものがある。)を原告の申告した所得金額に加算し、更に原告がこれらの受取利息を現実に現金または小切手により受取つて原告会社の代表者園尾武夫個人名義の普通預金に預入れ、また、その貸付金の名義を同人の個人名義とするなど課税標準の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい仮装し、これに基づいて、確定申告書を提出したので、国税通則法二四条、六八条の規定により、別紙表一〇ないし一三記載のとおり関係法条を適用して本件各処分をしたものである。

三、前記のとおり、本件貸付金は原告会社の代表者園尾武夫個人名義でなされており、両訴外会社の帳簿にも本件借入金および支払利息の相手方を園尾武夫と記載しているが、次の理由により、本件受取利息は原告会社に帰属するものと認むべきである。

(一) 原告会社代表者園尾武夫は、原告会社の設立以前から個人で金銭の貸付を行つていたが、漸次事業の拡大に伴い、これら事業を会社組織にするため昭和二八年一〇月原告会社を設立し、その代表取締役に就任した。

このように原告会社の事業目的は金融業であり、主務官庁にも原告会社名義で金融業についての届出がなされており、園尾武夫個人としては金融業の届出はなされていない。

(二) 両訴外会社は、いずれも右園尾武夫が金融業を目的とする原告会社の代表者であることを知らず、貸借の交渉、金銭の授受のすべてを園尾武夫を相手としてなしたもので、同人を貸借の相手方と信じて両訴外会社の帳簿にその旨記載しているにすぎないものである。

(三) 原告会社代表者園尾武夫は、同人個人としては貸金利息を収入したことはないと主張している。

(四) 園尾武夫が提出した同人個人の昭和三八年ないし昭和四二年分所得税確定申告書にはこれら貸金利息の申告がなされていない。

第三被告の主張に対する原告の答弁

被告の主張事実中、原告が本件各係争年度における受取利息の額を別紙表六ないし九の各原告記帳類欄記載のとおり計上し、これに基づき右各年度の法人税の確定申告をしたことは認めるが、その余は争そう。

原告の右各年度における受取利息は右原告記帳額に限るのであつて、それ以外にはない。

また、原告記帳の右受取利息は被告主張のように両訴外会社からのものではなく、備南製作所の代表取締役小坂市郎、福山パール紙工の代表取締役小松安弘、同社の専務取締役小松喜啓個人からのものである。

原告は、両訴外会社に金銭を貸付けたことはない。

第四原告の右主張に対する被告の反論

仮に本件貸付の相手方が両訴外会社の代表取締役またば専務取締役個人であつても、原告が金銭を他に貸付けて、その利息を収受していることにかわりはないのであるから当然原告の法人税の確定申告額に右利息をも含めて申告すべきである。

したがつて、原告の右主張は失当である。

(証拠)

一、原告

甲第一号証を提出し、証人古田励造、同小松喜啓、同小松安弘、同小坂市郎の各証言および原告会社代表者の供述を援用し、乙第一、二号証、第一六号証、第一七号証の一、二の成立は不知。

乙第一八ないし第二九号証、第三〇号証の一ないし四、第四二号証の成立は認める。その余の乙各号証については原本の存在ならびに成立を認める。

二、被告

乙第一、二号証、第三号証の一ないし七、第四号証の一ないし二二、第五ないし第一五号証の各一、二、第一六号証、第一七号証の一、二、第一八ないし第二九号証、第三〇号証の一ないし四、第三一号証の一ないし一二、第三二号証の一ないし一五、第三三号証の一ないし一三、第三四号証の一ないし一五、第三五号証の一ないし三、第三六号証の一、二、第三七号証の一ないし三、第三八号証の一ないし一五、第三九号証の一ないし二二、第四〇号証の一ないし一五、第四一号証の一ないし一四、第四二、四三号証を提出し、証人石井禎郎、同広光喜久蔵、同小坂嘉一、同小松安弘の各証言を援用し、甲第一号証の成立は不知。

理由

第一  請求原因一、二項の事実はいずれも当事者間に争いがない。

第二  そこで、原告の本件各係争年度における所得金額について検討する。

一、まず、原告が別紙表六ないし九の各原告記帳額欄記載(別紙表一の計と合致する。)のとおり、三八年度に合計一万二、〇〇〇円、三九年度に合計六万円、四〇年度に合計三万七、三〇〇円、四一年度に合計六万六、〇〇〇円の受取利息をそれぞれ計上し、これに基づき右各年度の法人税の確定申告をしたものであることは当事者間に争いがない。

二、原本の存在ならびに成立に争いのない乙第三号証の五、第四号証の二、第五ないし第一五号証の各一、二、第三一号証の二ないし一二、第三二号証の二ないし一五、第三三号証の二ないし一三、第三四号証の二ないし一一および一三ないし一五、第三五号証の二、三、第三六号証の二、第三七号証の二、三、第三八号証の二ないし一四、第三九号証の二ないし二一、第四〇、四一号証の各二ないし一四、証人石井禎郎の証言により成立の認められる乙第一、二号証、証人広光喜久蔵の証言により成立の認められる乙第一六号証、第一七号証の二(第一七号証の二については原本の存在も認められる。)および証人石井禎郎、同広光喜久蔵、同小松安弘、同小坂嘉一の各証言ならびに弁論の全趣旨を総合すると、両訴外会社は、本件各係争年度において、原告会社の代表取締役である園尾武夫から同人名義で別紙表二ないし五記載のとおり金銭を借受け、同人に対し同人個人名義のもとに別紙表六ないし九記載のとおり利息をそれぞれ支払つたことが認められ、したがつて右各年度における両訴外会社の支払利息の合計は、被告主張のとおりの額となる。乙第二三、二四号証の各記載および証人小坂市郎、同小松喜啓の各証言、原告会社代表者園尾武夫の供述中右認定に反する部分は信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

ところで、右認定のとおり、両訴外会社に対する金銭の貸付および両訴外会社の利息の支払はいずれも原告会社の代表取締役である園尾武夫個人名義でなされている。しかしながら、前記乙第一、二号証、成立に争いのない乙第一八ないし第二四号証、第四二号証、証人石井禎郎同小松安弘、同小松嘉一の各証言および原告会社代表者園尾武夫の供述を総合すると、園尾武夫は、昭和二年ごろから個人で金銭の貸付を行つていたが、昭和二八年ごろ金融業を目的とする原告会社を設立し、その代表取締役に就任したこと、主務官庁に対する金融業の届出は原告会社名義でなしており、園尾個人としては右届出をしていないこと、本件各係争年度においては、同人個人として利息付で金銭を他に貸付けたり、貸金の利息を受取つたりしたことは全くなく、同人の右各年度の所得は農業所得、配当所得および給与所得のみであつたこと、両訴外会社はいずれも、貸借の交渉、金銭の授受のすべてを園尾武夫との間でなしたうえ、同人が原告会社を設立してその代表取締役に就任していることを知らなかつたため、同人個人を本件貸借の相手方と信じて両訴外会社の帳簿にその旨記載したものであることが認められるので、本件貸付および利息の授受は、園尾武夫個人ではなくて原告会社がなしたものというべく、したがつて、前記認定の受取利息も原告会社に帰属するものと認めるのが相当である。

三、右認定事実に原本の存在ならびに成立に争いのない乙第四三号証を合せ考えると、原告は、昭和四一年度において、訴外藤岡岩雄から受取るべき未収利息が合計八、一〇〇円(その内訳、昭和四一年一〇月三一日二、四〇〇円、同年一一月一八日二、一〇〇円、同年一二月二六日三、六〇〇円)あることが認められる。

四、そうすると、原告には本件各係争年度において被告主張の金額の所得があつたことになり、原告の、右各年度の法人税の確定申告には少くとも被告主張の各金額が計上もれになつていたものといわなければならない。

第三  以上の認定事実に基づき、本件各処分の適否について判断する。

一、更正処分について

(一)  三八年度

右年度において、原告は、三二万四、〇四三円の受取利息がありながら、このうち一万二〇〇〇円を計上していたにすぎないから、除外利息額は三一万二、〇四三円となり、これに原告の同年度の確定所得申告額二、九〇七円を加算すると、同年度の原告の所得額は更正額二五万四、八〇七円をこえる三一万四、九五〇円となる。

そして、右二五万四、八〇七円を同年度の所得金額とすると、法人税額は別表一〇の(三)の摘要欄記載の算出方法により八万三、八〇〇円となる。

(二)  三九年度

右年度において、原告は、四三万三、二六〇円の受取利息がありながら、このうち六万円を計上していたにすぎないから、除外利息額は三七万三、二六〇円となる。

また、三八年度の法人税の更正に伴い原告が納付すべき事業税の増加額は、地方税法七二条の二二によれば二五万一、九〇〇円に一〇〇分の六を乗じた一万五、一一〇円(一〇円未満切捨)となり、これは三九年度の損金であるから、原告の同年度の所得額は、更正額三八万一、五九二円をこえる三八万一、六六二円(除外利息三七万三、二六〇円に確定申告額二万三、五一二円を加算した三九万六、七七二円から一万五、一一〇円を差引いた額)となる。

右三八万一、五九二円を同年度の所得金額とすると、法人税額は別表一一の(四)の摘要欄記載の算出方法により一二万五、七〇〇円となる。

(三)  四〇年度

右年度において、原告は、六四万一、〇七〇円の受取利息がありながら、このうち三万七、三〇〇円を計上していたにすぎないから、除外利息額は六〇万三、七七〇円となる。

また、三九年度の法人税の更正に伴い原告が納付すべき事業税の増加額は、地方税法七二条の二二によれば三五万八、〇〇〇円に一〇〇分の六を乗じた二万一、四八〇円となり、これは四〇年度の損金であるから、原告の同年度の所得額は除外利息六〇万三、七七〇円から確定申告額の欠損三万四、九一〇円、事業税の増加額二万一、四八〇円を差引いた五四万七、三八〇円となる。

そして、右五四万七、三八〇円を同年度の所持金額とすると、法人税額は、別表一二の(四)の摘要欄記載の算出方法により一六万九、五〇〇円となる。

(四)  四一年度

右年度において、原告は、六八万一、二一〇円の受取利息がありながら、このうち六万六、〇〇〇円を計上したにすぎないから、除外利息額は六一万五、二一〇円となる。

また、四〇年度の法人税の更正に伴い原告が納付すべき事業税の増加額は地方税法七二条の二二によれば五四万七、三〇〇円に一〇〇分の六を乗じた三万二、八三〇円(一〇円未満切捨)となり、これは四一年度の損金であるから、原告の同年度の所得額は更正額五二万九、一二九円をこえる五二万九、五七四円(除外利息六一万五、二一〇円に未収利息八、一〇〇円を加算した六二万三、三一〇円から確定申告額の欠損六万〇、九〇六円、事業税の増加額三万二、八三〇円を差引いた額)となる。

そして、右五二万九、一二九円を同年度の所得金額とすると、法人税額は別表一三の(四)の摘要欄記載の算出方法により一四万八、一〇〇円となる。

以上の次第で本件各係争年度の法人税額に対する更正処分はすべて適法である。

二、重加算税賦課処分について

原告が両訴外会社との金銭貸借および利息の授受をその代表取締役である園尾武夫個人名義でしていたことは先に認定したとおりである。

前記乙第三八号証の一四、第三九号証の一〇、一一および一三ないし一六、第四一号証の九と原本の存在ならびに成立に争いのない乙第三号証の五、第四号証の二、五ないし八および一七、第五ないし第八号証の各一、二、第一〇号証の一、二によると、原告は、福山パール紙工からの返済金、昭和三九年六月一一日分三〇万円、同年七月二五日分五〇万円、昭和四〇年二月一五日分一〇〇万円、同年三月一〇日分一五〇万円を訴外株式会社中国銀行神辺支店の園尾武夫個人の普通預金口座に預入れていること、原告は、昭和三九年三月一六日備南製作所から支払われた金一五万円(同会社提出、訴外倉田浪江引受の額面一五万円の為替手形による入金)と福山パール紙工からの返済金昭和三九年九月二八日分五〇万円、同年一〇月九日分五〇万円、同年一一月三〇日分三〇万円、同年一二月二八日分五〇万円、昭和四〇年一月一一日分五〇万円、昭和四一年七月二七日分五〇万円をいずれも訴外株式会社広島銀行神辺支店の園尾武夫個人の普通預金口座に預入れていることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

以上の認定事実に弁論の全趣旨を合せ考えると、原告は三九年度ないし四一年度の法人税について、課税標準額の計算の基礎となるべき課税要件事実を隠ぺい仮装し、これに基づいて過少な確定申告書を提出したものと認めることができる。

そうすると、被告は国税通則法六八条一項により原告に対して重加算税を賦課することができることとなる。

そして、右各年度の重加算税額は、別表一一ないし一三の各(五)の摘要欄に記載の算出方法により、いずれも被告主張のとおりとなるから、重加算税賦課処分もすべて適法である。

第四結論

以上の次第で、被告が原告に対してなした本件各処分には何ら違法な点はなく、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 川口春利 裁判官 稲沢勝彦 裁判長裁判官辻川利正は転任につき、署名捺印することができない。裁判官 川口春利)

表一

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表二

(一)

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(二)

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表三

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(二)

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表四

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表五

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表六

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(二)

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表七

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(二)

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表八

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表九

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(二)

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表一〇

三八年度分更正処分の計算内訳表

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表一一

三九年度分更正処分および重加算税賦課処分の計算内訳表

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表一二

四〇年度分更正処分および重加算税賦課処分の計算内訳表

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表一三

四一年度分更正処分および重加算税賦課処分の計算内訳表

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